こんにちは。
私は現在、二次救急病院で病院相談員(ソーシャルワーカー)として働いています。
以前、「家族が入院したときに知っておいた方がよいこと」について記事を書きました。
日々、現場で入院患者さんやご家族と向き合う中で、最近特に増えていると感じるのが「身寄りのない方」や「家族と疎遠な独居高齢者」の入院です。
具体的には、以下のような方を頻繁に目にします。
こうした現場を日常的に見ているからこそ、50代である私自身も「将来は決して他人事ではない」と感じています。
そこで今回は、独り身で将来が不安な方や、家族がいても頼るのが難しい方に向けて、「身寄りがないまま入院した場合、その後にどのような問題が起こり得るのか」という現実を、前編・後編の2回に分けて詳しくお伝えします。
身寄りのない人に「ある日突然」訪れる入院のリアル
救急車で運ばれる事態は、予告なく訪れます。
身寄りのない人の場合、搬送されてきた時点では、私たちはその方がどんな生活を送ってきたかを知りません。
看護師や相談員が聞き取りをして、ようやく背景が見えてくるのです。
幸いにも治療で回復し、自宅での生活に支障がない、あるいは既に介護サービスを導入していて体制が整っている場合は、大きな問題にはなりません。
しかし、現実はそう甘くないケースも多いのです。
このように、身寄りのない患者さんが「自宅での生活を続けることが難しい」と判断された場合、病院から別の転院先を探すか、施設への入所を検討する必要が出てきます。
実質的な身寄りなしが増える時代の家族の限界
ここで最大のハードルになるのが、「頼れる身内がいない」という事実です。
「天涯孤独」という方だけでなく、最近は家族がいても頼れないケースが非常に増えています。
私たち病院側が、家族の連絡先を調べて連絡を取ろうとすると、次のような厳しい現実に直面することも珍しくありません。
これらは決して特別な事例ではなく、今まさに病棟で日常的に繰り広げられている光景なのです。
病院や施設が求める「身元保証人」という高すぎる壁
なぜ、身寄りがいないことが、これほどまでに大きな問題になるのでしょうか。
当院のような急性期病院は、命を救うことが最優先されるため、身寄りの有無に関わらず救急患者を受け入れています。
しかし、本当の困難が表面化するのは、その後の「転院」や「施設入所」を検討する段階です。
参考例として、名古屋市権利擁護支援協議会が示したガイドラインの調査結果からも、非常に厳しい現実が浮き彫りになっています。
数字で見る「保証人がいないと進めない」現実
(出典:身寄りのない人の権利擁護支援に関するガイドライン/ 2023年4月)
つまり、治療が終わっても「身元を保証してくれる人がいないという理由だけで、次の受け皿が見つからない」という事態が、統計上も明らかになっているのです。
家族や身元保証人に求められる「4つの役割」
病院や施設が身元保証人を求める背景には、これまで親族が担ってきた役割を、誰かが引き継がなければ運営が成り立たないという事情があります。
主に求められているのは、次の4つです。
- 費用の支払い保証: 入院費や施設利用料が滞った場合の金銭的な担保
- 緊急時の連絡窓口: 容体急変時や急な転院が必要になった際の連絡・対応
- 治療方針の確認や判断: 手術や延命治療、看取りの方針などに関する意思決定
- 死後の手続き: 亡くなった際の遺体・遺品の引き取りや居室の片付け
これらすべての責任を、疎遠な親族や高齢の兄弟姉妹に求めることは、すでに家族の役割の限界を超えていると言わざるを得ません。
最後に:50代の私たちが今、考えるべきこと
かつては、家族が担うのが当たり前とされてきたこれらの役割。
しかし、単身世帯が増え、家族の形が大きく変わった現在では、個人の努力や親族の善意だけで支えきれる段階を過ぎています。
「自分には頼れる人がいない」と感じたとき、どのような備えが必要なのでしょうか。
次回の記事では、家族の代わりとして機能する身元保証サービス(身元保証人)について、具体的に解説していきます。
独居高齢者が増え続ける今、50代の私たちにとって、この問題は決して他人事ではないのです。



