50代に入ると、若い頃とは違う視点で働き方を考える場面が増えてきます。
体力の変化を感じたり、職場での立ち位置が変わったり、任される業務の幅が広がったり…。
積み重ねてきた経験が武器になる一方で、気づかないうちに負担を抱え込みやすくなる時期でもあります。
私自身、病院でソーシャルワーカーとして長く働いてきた経験から、業務の線引きの難しさや、依頼が集中した時の重圧には何度も向き合ってきました。
その中で、仕事を続けるうえで私が大切にしている考え方が二つあります。

どちらも仕事の流れを整え、心に余裕を生むための土台になります。
まずは、なぜ50代になると意識的に働き方を見直す必要が出てくるのか、具体的な悩みから整理していきましょう。
50代が抱えやすい仕事の悩み
50代が抱える悩みの多くは、役割の広がりや調整業務の多さといった構造的な変化から生じます。
自分のペースだけでは進められない仕事が増え、周囲との調整に時間を取られる場面が多くなることも。
気づけば複数の案件を同時に抱え、優先順位を判断しづらくなる傾向があります。
若い頃は勢いで進められた場面でも、今は丁寧な説明や調整が欠かせなくなり、業務の線引きが曖昧になりやすいのもこの年代の特徴です。
その結果、
といった問題が起きやすくなります。
改善の必要性は理解していても、実際の現場ではなかなか行動に移せない─。
そんな葛藤を抱える人も少なくありません。
だからこそ、意識して働き方を整える必要が出てくるのです。
その工夫の一つが、仕事の基本である「キャッチボール」の流れを大切にする姿勢です。
投げられたボールを早く返す
ボールを循環させ、仕事にゆとりを生む
仕事は、人との会話のキャッチボールで進んでいきます。
問い合わせや確認の依頼など、自分のところに飛んでくる “ボール” をどう扱うかで、働き方の質は大きく変わります。
この考え方は、以前教わった先輩から何度も学んだ、仕事の流れを止めないための基本です。
複数の依頼が重なった時、どのボール(タスク)から手を付けるか迷っていると、業務が一気に積み上がり、心理的な余裕が失われてしまいます。
そこで大切なのが、早めにボールを返す意識を持つことです。
ボールが絶えず循環する状態が保たれるため、焦りが減り、気持ちにゆとりが生まれます。
一つずつ丁寧に対応でき、相手からの返球を待つ余白も確保できます。
即答できない時は「状況共有」が信頼に繋がる
とはいえ、すぐに対応できない場面は誰にでもありますよね。
そんな時ほど、途中経過を共有するだけで、相手の不安を大きく減らせます。
たとえ短い内容でも、相手に「気にかけてくれている」という安心感を与えられます。
このように状況を共有し、自分のところでボールを抱え込まない状態を保つことが、結果として質の高い仕事につながるのです。
そして、もう一つの重要な軸が、仕事の範囲を明確に「線引き」することです。
自分の仕事の範疇を明確にする
境界線が曖昧になる背景
キャリアを積み重ねるほど、周囲から頼られる場面が増えます。
「よく知っているから」「仕事が早いから」と依頼が集まるのは、確かな信頼の表れです。
一方で、業務の境界線が曖昧なまま引き受け続けると、責任の所在が不明瞭になりやすく、特定の人に負担が偏る原因になります。
特に医療や福祉の現場では、担当業務の線引きが難しい傾向があります。
私の勤める病院において、ソーシャルワーカーという立場も例外ではありません。
「困ったらワーカーへ」という空気が根強く、業務の境界が曖昧になりやすいのが実情です。
仕事の線引きをする目的
それぞれの役割の境界線を明確にするのは、相手を突き放すためでも自分の負担を減らすためでもありません。
本来の業務を守り、職場全体が適切な流れで動くようにするための大切な作業です。
もちろん、一定のファジーな部分は「暗黙の了解」として残しつつ、「この業務を自分が対応するのは適切ではない」と感じる場面では、理由を添えて丁寧に伝える。
こうした積み重ねが、負担の偏りや責任の曖昧さから生じるリスクを防ぎます。
私自身も時間をかけて調整を進め、今はずいぶん働きやすい環境に整ってきました。
役割を明確化する効果
担当業務の境界線が明確になると、仕事の判断軸が定まり、スムーズに業務を進められるようになります。
その結果、対応スピードが上がり、仕事の質も安定します。
さらに、負担が偏りにくくなるため、心の余裕が生まれるのです。
自分も周囲も働きやすい状態を維持するには、この「適切な役割の整理」が欠かせません。
これら二つの軸が、50代の働き方をどのように支え、より豊かなものにしてくれるのかを最後に確認しましょう。
50代の働き方に「ゆとり」を取り戻す二つの軸
「仕事の流れをスムーズに保つ工夫」と「適切な境界線の設定」という二つの軸は、単に仕事のスピードを高めるためのものではありません。
むしろ、日々の業務に余白をつくり、働き方にゆとりを取り戻すための、最も効果的な方法です。
こうした意識が根づくことで、不要な焦りや疲労が減り、安定したペースを維持しやすくなります。
長くキャリアを築いてきたからこそ、この二つの軸が、これからの働き方に大きなゆとりをもたらすのです。
おわりに
50代は、これからのキャリアを見据える上で、働き方を整える大切な時期です。
無理なく働き続けるためには、業務の流れを整え、役割をクリアにする意識が欠かせません。
これまで積み重ねてきた経験をいかし、自分に合った距離感で仕事に向き合うことで、今後の働き方はより豊かになっていきます。
日々の小さな工夫が、今後の大きな安心につながるはずです。



